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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(あ)1656号 判決 1953年2月10日

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人大滝敏夫の負担とする。

理由

被告人寺沢円一、同中島市男の弁護人佐藤正治の上告趣意について。

所論は結局単なる量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。

被告人大滝敏夫の弁護人本木正美の上告趣意第一点について。

所論は原審で主張、判断されなかった事項について第一審判決の違法を主張するもので適法な上告理由とならない。しかも前科の事実を被告人の自白だけで認定しても違法でないことは当裁判所の判例とするところであるから論旨は採るを得ない。(昭和二三年(れ)一四二六号同二四年一〇月五日、昭和二三年(れ)七七号同二四年五月一八日各大法廷判決参照)その余の論旨は量刑不当の主張であって、適法な上告理由とならない。

同第二点について、

刑訴法三三五条一項は有罪判決には罪となるべき事実を記載すべきことを要件とするだけで、その記載の方法等についてはなんらの制限を設けていないのであるから、同規則二一八条がその記載方法として起訴状記載の公訴事実等を引用することができると規定しても有罪となるべき事実の記載としては充されたものというべく、同規則が刑訴法三三五条一項を変更したものとはいえないこと明らかである。されば所論違憲の論旨は、その前提を欠き理由がない。(なお、右規則が憲法所定の裁判公開の原則に反するとの主張は、原審で主張判断されなかったところである。)

なお本件について記録を精査しても刑訴四一一条に該当する事由はない。

よって、同四〇八条、一八一条(但し、被告人大滝敏夫についてのみ)により全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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